備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

便利は不便:「クレジットカード+キャッシュカード+Suica」はやめておけば良かったかもという話

 クレジットカードと銀行のキャッシュカードとJR東日本Suica(VIEW Card)が一緒になったカードを数年前から持っています。3つの機能が1枚のカードに統合されて「これは便利」となるかどうかの実験だと思って、試してみることにしました。
 まず入手してすぐに気づいたことは、交通系ICカードであるにもかかわらず、定期券情報が書き込めないことでした。定期もICカードで持ちたいと思ったら、カードを複数枚持つ必要が出てきます。カードの枚数が減るかと期待していたののにそんなことはありませんでした。また、間違えて同時に2枚を読み取り機にかざしてエラーを出したりしないように、分けて持たなければいけないという、余計な注意も必要になります。
 そして今回クレジットカードの更新時期です。クレジット会社から書留でカードが送られてきます。そして、いったいどのような手続きが必要なのかと思って説明書を読むと、生体認証情報が入っていないので銀行に行って登録する必要があること、Suica残額も引き継がれていないのでJRの駅にあるATMのようなところ(VIEW ALTTE)にいって引き継ぎ手続きをする必要があることがわかりました。3枚のカードが一緒になっているので手続きが1/3になるかと思ったらそんなことはなくて、手続きはそれぞれで必要があるということでした。これもちょっとがっかりです。
 しかし、それだけなら特にたいしたことではありません。さらに、私を待ち構えていたのは銀行での不運なできごとでした。
 年が明けて、カードの有効期限も迫ってきて、ようやく銀行の窓口に出かけられる時間ができました。子ども名義のお年玉用口座を開設するのにもインターネットバンキングを奨めてくるなんてどうなのかと思いつつ、また投資信託の話もすぐ済みますからお時間をというので聞き流しつつ、やっと新しいカードと古いカードの両方を差し出して、最後に自分のカードの手のひら認証データの引き継ぎに至ります。月日を経て手のひらのかざし方もだいぶ板に付いてきたので、何のトラブルもありません。ここまでは順調でした。
 その後、窓口のKさん(名前覚えちゃいました、後から書くように長時間対応してもらったので)はSuicaの残額の有無を聞きます。入っていますと答えると、新しいカードに引き継がれているので大丈夫ですとの説明。ここで私は「そうなんですか!」と驚きの声を上げました。今思い出すと、それまでとは少し口調を変えて、少し芝居がかった調子で、本当にそうなのか、勘違いじゃないかどうか確認したいという思いが自然にこもった発声をしていたと思います。というのも、私が読んで、持ってきた説明書には、別々に手続きをする必要があると書いてあったからです。それでもKさんは平然と私の疑問をスルーしたので、きっと私の方が間違っているのだろうと考えて、むしろ安心しました。両方一緒に手続きできるなら最初からそう教えてくれれば良いのに、全員できるわけではないから書類には書いていないのかな、一箇所で済ませられた自分はラッキーだ、最初にJRの方に行かなくて良かったなどと考えていました。さっそく私の古いカードは私の目の前で鋏を入れられて切断、回収されます。そしてすべての手続きは終わったことになり、私はM銀行を後にします。
 が、新しいカードに、本当に前のSuicaの残額が引き継がれているのかどうか、気になります。(ちなみに新旧のカードのSuicaのIDは異なります。)マジックを目にした後のような感じがしたので、やはりどうしてもまず中身を確かめてみたくなりました。幸い銀行は駅のすぐそばです。さっそく確認すると・・・何と残額は「0円」と出ました。唖然とします。涙目! 最新の残額を正確に確認してはいませんが、オートチャージ限界を2000円に設定している私のSuicaが残額なしということは考えられないと理論的にも確認した上、少し急ぐべき時間になっているということを考え合わせても、ここですぐに戻らないともっと面倒なことになると結論づけ、銀行に戻りました。
 迷っているとさっそく声をかけてくれたフロアにいる方に説明をします。その方が奥に入っていったりしますが、どうもよくわかっていないようです。さっき対応してくれた窓口の人の時間ができるまで待たされます。やっと窓口に呼ばれて説明を聞きます。
 それからの手続きが大変でした。銀行の窓口の方は間違ってしまったということで、申し訳なさそうで、平謝りでした。いくつかの手続き書類を書いて、私の銀行口座に後日Suica残額が入金されることになりました。「Suica残額払戻請求書」みたいな名前のフォーマットの書類がちゃんとありました。どうやら引き継げるカードとそうでないカードがあって、その区別を誤ったようです。システムを複雑にすれば人間のミスは起こるものなので、きっとこういう間違いが起こるのも想定内なのでしょう。私の時間は40分ほど余計に奪われましたし、余計な勧誘ばかり熱心で基本的な手続きが確実にできない行員の振るまい(といっても個人の問題ではなくそうするよう命じているマニュアルや教育)に疑問を覚えないではいられませんでしたが、窓口の方も複雑なシステムの犠牲者だと思うと、私がもっと強固に主張してカード切断を防ぐ協力者になれば良かったのかとも考えたりしました。(これは、concerned publicが科学技術の問題点を繕う役割を果たして、結果的に科学技術の受容を促すということになるのでしょう。)
 お詫びにタオル1枚もらえましたし。あとJRに行かなくてすんだというポジティブシンキングもできるかと思ったのですが、よく考えたらSuicaオートチャージの設定にはやっぱり足を運ばないとダメなのだろうかと思いついたところです。(追記:オートチャージは引き継がれてきました。たしかにクレジットカードの機能ですね。)