備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

明るくない科学コミュニケーション

 招待講演のテーマに惹かれ「科学コミュニケーション研究会」年次大会(これ)に行って少しだけ勉強してきました。初参加です。
 最初は長崎大学。これまで公式サイト等の情報でしか知らなかった組換えDNA実験施設(BSL-4、古い言い方でP4)計画の話が初めて生で聞ける良い機会です。ただし話をされる方が実際に研究されるであろう感染症研究者ではなく、役職上携わっている偉い先生ということで残念かと思っていたのですが、良い意味で期待をはずれリアルな話が聞けました。最近では文科省も首を縦に振るようになってきており、28年度に構想設計、29年度に本設計という建設予定だそうです。その他、反対者が共産党関係者や60年安保闘争世代であるとか、学内者も大学近くの同じ町内に住むがマンションなので地元とつながりがない現状とか、市議会への請願は他の問題と干渉して苦労することなど、最先端研究施設の建設であるにもかかわらず、「昭和的」な町内会問題であることに驚きました。「熟議」「合意形成」「ステークホルダー」といった言葉などまったく無縁です。
 次は東北大学の北村正晴先生。北村先生の話を聞くのは、このとき以来で、3・11以降は初めてでした。レジリエンス・エンジニアリングという考え方に、価値を内側に組み込んだ工学の方向性として大変関心を持ちました。北村先生は、科学コミュニケーションの場なのに暗い話で申し訳ありませんと言われていましたが、私にはちょうど良い明るさでした。