備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

かつて存在した不在者の存在場所

 夢を見た。2年前に亡くなった猫を、いつも病院に連れて行くときに使っていたカゴで外に連れ出していて、そのカゴを電車の中に置き忘れてしまったことに電車を降りてしばらくして気付くという夢だ。
 どこに行くべきだろうか、保健所だろうか、忘れ物を預かってくれるところにいくべきだろうか、早く帰らないといけないので時間がない、こんなことしたら奥さんに怒られるだろうな、もう4歳児と二人で出かけることも許してもらえなくなるかも知れないなどと迷っているうちに目が覚めた。
 最近、その猫の名を耳にしたのは、数日前の4歳児との会話でだ。久しぶりに「ミューちゃん、どこ?」と聞いてきた。答え方は毎回迷うのだが、今回は「遠いところだよ」と言ってみた。すると、「あっち?」と窓の外を指すので、ちょっと迷ったが「あっちかな?」と上を指して答えた。
 子どもが死をどのように把握しているのか、できるのかよくわからない。また、理解の仕方も少しずつ変化していくだろう。「天国」というのは、かつては存在していた不在者の存在場所を示すのに有効な記号だと思う。
 そう言えば、死んだら天国に行くのだと、小さい頃私は習ったことを思い出した。4歳児は、マンションの上の階にいると思ったかも知れない。