備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

注文の多い料理店

 新装開店のパチンコ屋の花輪を思わせる派手な構えの店内を覗いたところ、ビーズや造花やリボンで髪を飾ったおばあさんがウェイトレスをやっているのが目に映った。今日は、見るからに不思議な装飾で、人間の耳には聞こえない波長の音波を発していそうな、この定食屋さんに挑戦だ。
 まず、店の壁やカウンターのあらゆるところに何かが貼ってあり、客を飽きさせない配慮にあふれているところが特徴的だ。読んでみると、その多くは注意書きである。イスは荷物置き場ではない、ティッシュは皿の上に置かずに捨てること、食事が来たら新聞を読むのをやめるように、などなど細かい注文が多数ある。初心者なので、見落としがあってはならないとキョロキョロしてしまった。ちなみにティッシュと言えば、注文を取りに来るときにお手拭き代わりに使いかけのポケットティッシュをわたされる。私が受けとったものには、「アイフル」と書いてあった。
 また、壁の掲示物には、豚肉の効用など素材の豆知識系のものも多い。さらに、この店はテレビや雑誌によく登場しているらしく、メニューの脇にその説明がいろいろ書かれている。ウェイトレスさんは雑誌の切り抜きらしきものを、客の若者4人組に「特別に見せてあげるわ」と言いながら見せていた。他には、なぜか新聞のコラムの切り抜きがあって、下に「待ってるあいだも勉強」と書かれていた。この店では、様々な情報のインプットを強要されるようである。
 ところで肝心の食べ物だが、フライのセットを頼んだ私は、自家製のソースを少しずつ足しながらかけるようにと、ウェイトレスさんに指示された。ショウガ焼きを頼んだ同伴者は、ショウガ焼きのタレをキャベツにからめながら食べるように言い聞かされた。ご飯は最初から白黒のゴマがたっぷりかかっていた。食べ方の自由もあまりないように見える。
 味は決して悪くなく、山盛りのキャベツも全部食べた。ただし正直なところ、残すのが少し恐いという気持ちもあった。お金を払って店を出るとき、ウェイトレスさんは私たちが全部食べたのを確認して「100点満点ね」と誉めてくれた。
 同じ体験をしてみたい方は、高円寺駅北口でアートフラワーに埋もれた店を探してください。