備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

桜の木、最後の日

 近所の空き地(というか敷地の一部なのだが使われていない土地)にコンビニができるということで、工事が始まった。一応住宅街であるこのあたりにしては珍しい空き地だったので、いずれ何か有効利用されるに違いないとは思っていたが、とうとうその日が来たようだ。
 昨日から始まった工事では、まず樹木を切り倒し、根を掘り出す作業にかかっていた。普通のコンビニなら5軒くらい作れそうな(新宿西口のセブンイレブンなら10軒はいける)敷地なので、全部切る必要はないだろうと思って見ていたのだが、2日がかりですべて切り倒していた。春になると見事な花をつける桜の木も、その例外ではなかった。数十年かけて育ってきた枝や幹が、ほんの一日でなくなってしまう。植物に心があるなんて考えたことはないし、木の構成要素の多くは死んで木化した細胞だという植物学的事実も知ってはいるのだが、それでも大きな季節変化を見せる一本の木という有機体の存在感は、命の喪失という印象を抱かせるのに十分なほどであった。