備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

松永和紀のアグリ話●GMこぼれおち、ずさんな調査で説得力もなし

http://biotech.nikkeibp.co.jp/fs/kiji.jsp?kiji=422
 この文章は、遺伝子組み換えナタネが日本で自生していないか監視をする市民活動について述べものだ。科学ライターである著者は、市民が検体を採取して分析する試みが、科学的な手続きの面で不十分だと問題視している。

市民が自分たちの手で検体を採取して調べる動きが近年、盛んになっている。松葉のダイオキシンを調べる運動もある。しかし、いくら市民参加型調査とはいえ、科学的なアプローチを欠かしてはならないだろう。きちんとした指導者を置き計画をたて、試料の採取や保存、検査法など厳密に定めて、最善を尽くして実施すべきではないか。

 科学的なアプローチが大切だというのは、そのとおりだと思う。しかし同時に、いったいこれは誰に対して言っているのだろうか、とも疑問に思う。というのも、実際にこういった「指導」ができる人は限られているであろうからだ。
 そういった人の手助けを得られなかったのは、とても残念なことだ。しかし、もし市民のこの活動が大切なものだとするならば、こういった場合に良い科学アドバイザーを得られるような仕組み、およびそもそも専門的な知識をもった人の中でこういった研究活動に参加する人材が必要となる。問題なのはそういった仕組みや人材があるかどうかであって、市民団体の努力不足のように述べるのはおかしいのではないか。