備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

「お役所仕事」復権。

 クリスマスの準備もお正月の準備も、簡単にできるようになったものだと思う。もちろん、わが家がどちらも大したことをしないからそう感じるだけなのかも知れない。しかし、クリスマスイブには夜遅くまでチキンもケーキがコンビニやスーパーで簡単に手に入るし、いわゆるお正月用食品の類もあらゆるところに売っている。もともと3が日にはお店が開いていないのが普通だったので、大晦日には慎重に買い物をしたものだが、今では1月2日や場合によっては1日からお店が開いているため、いくらでもうっかり忘れ物ができてしまう。通販で宅配となれば、それこそ一切休みなしだ。しかも時間指定で来てくれる。

 でも、買う側にとって便利にはなったということは、売る側にとって厳しくなっているということでもあるはずだ。競争が激しくなってサービスは向上した。他方で、サービスする側は過剰な負担を強いられる。こういう現象は、いろいろなところで起こっているように見える。規制が撤廃・緩和されて競争が激しくなってサービスが向上するのは良いことだ、という言葉を少し前まで何度も聞いていたように思う。しかし、多くの人はサービスの受給者であると同時にサービス提供者なのだから、全体として良い方向に回っているのかどうか、負担が均一に分担されているのか、ということを考えると大きな疑問がわいてくる。

 そういえば、郵便局が1月2日も年賀状を配達するようになったのは、数年前のことだ。郵便局よ、お前もか。残された砦は官公庁くらいだ。「お役所仕事」といえば悪い意味の言葉でしかないのだろうが、過労死や自殺の防止に向けて、ぜひ社会全体として復権してほしいものだと思う。怠惰だとか、モラルハザードだというやつがいたら言い返さなければならない。過労死や自殺に人を追い込む方が、道徳の崩壊に他ならないと。