備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

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 ときどき、冷蔵庫の前に立って考えてみる。この冷蔵庫は、ここに来るまで、どれだけの人とかかわってきたのだろうかと。
 まず、製品を考案した人たちがいる。部品の一つ一つが、いろいろなところで作られて、組み立て工場に運び込まれたに違いない。倉庫から店頭を旅して、ここにたどり着いたに違いない。そこでかかわる人の数は、とても名前を覚えきれるようなものではないだろう。そんなことを考え、ちょっと気が遠くなってみるのも楽しい。簡単なトリップ。別に冷蔵庫じゃなくても可能。
 ただし、そういう人の姿を、私たちはできるだけ見えないようにしている。大量消費社会において、「物」に付随する「人」の痕跡は、きっとない方が無難なのだろう。通常はせいぜい、売り手の顔が見えるくらいだ。自販機なら、それもない。コンビニの人が皆同じ服を着ているのは、誰が売ったか印象づけないようにする作戦だ。ただし、プレゼントの場合は、送り手に限定して「人」を感じさせることになっている。
 ところで、ディスカヴァー・トゥエンティワン社の本の最後のページを見て、著者、出版社の名前の他、デザイン、営業、校正、校閲などに携わった個人の名前や会社名がずらっと並んでいることに気づいた。最初、香川知晶『いのちは誰のものか』で気づき、最近は長神風二『予定不調和』で確認しただけなので、他の本はどうなっているのか知らないのだが、珍しいし、面白いと思う。本を作るのに、これだけ多くの人や組織がかかわっていることは、読む人からはまったく見えないようになっているし、多分書いている方も見えていないからだ。あらためて見せられると新鮮な感じ、がした。