ケルト民族に起源を持ち、死者の霊が甦ってくるとされる10月末日のお祭りの日に、カボチャのパイを買って帰るよう指令が出た。ターミナル駅に多数出店しているそのチェーンは、JR新宿駅構内にも店を持っているのだが、地下鉄の定期しか持たない私は西武新宿駅(こちらは改札外)にある方に行こうと決めた。
ところが、ビルになっている駅のどのあたりか、何階なのか、ネットでは詳しい場所がよくわからない。少し迷うことを覚悟で向かったところ、店は見えないのに、それらしいにおいがしてきた。そして、香りの分子濃度が高くなっていそうな方向に進み、目的の店を容易に見つけることができた。
案内図や店を求めてキョロキョロしていた私は、視覚情報に頼るつもりでいたことになる。しかし、実際に役立ったのは嗅覚情報だった。普段目に頼りすぎていること、鼻にさほど期待していないことが、明らかになった。