備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

志願者数ランキング

 これから入試シーズンです。いつ頃からか、私立大学の志願者数ランキングなるものが出回るようになりました。受験サイトだけでなく、大手新聞社やテレビまでが報道しているようです。どうして、そんなものが出てくるんだろうか、大学関係者としてはちょっと不思議に思っています。
 たしかに、志願者数が多いということは、一見人気が高いことと同義であるようにも見えないではありません。しかし、そうではないことはすぐわかります。まず、志願者数の多いところが偏差値の高いところとは限りません。(受けても受からない大学は、敬遠されるからです。)また、定員数が違うのに志願者数を比較してもあまり意味がないでしょう。
 さらに、こういったことに加えて、次のような事情もあります。
(1)併願者が存在している。
 本当は一人が一回しか受けていないのに、その人が十数学科を併願しており、志願者数のうち十数人分をかせいでいたりします。出回っている志願者数ランキングは、大学発表の数値をそのまま掲載するだけですが、それでは「本当の」志願者数は見えません。何学科併願しても検定料が同じという場合もあります。こういった併願制度は、受験生の便宜のために導入されていると言われており、それは間違いではないと思いますが、志願者数という数字を大きく見せる効果があることもまた確かです。
(2)単純に志願者数を増やそうと思えば試験日・試験会場を増やせば良い。
 国公立大学と違って、私立大学はそれぞれ試験日を設定できるので、そうなります。志願者数が大幅に増えた大学があったとき、その原因を人気が出たことに求めるだけでなく、試験日・試験会場・試験方式の増加が要因ではないかと検討してみることも可能です。多くの大学は、無理してまで試験日・試験日程を増やさないと思いますが、それは名目上の志願者は増えても、それによって「新規に」獲得できる「入学者」数がコストに比してさほど大きくないと予測していたり、受験機会の増大がブランド力の低下に結びつくことを気にしたりするからでしょう。
 きっと今年も、どこかのマスメディアが、2015年度私立大学志願者数ランキングを取り上げると思います。
 最近伸びてきた大学は? 今年は○○大が雪辱。勝因は何か? きっと、箱根駅伝について報道するときと同じように、そうするでしょう。