備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

UFJ資料隠し

 興味を持ったのは、三菱自動車のケースとよく似たところがあるからだ。といっても倫理の問題というより、人の心理の問題として関心がある。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20041008mh16.htm

を読むとわかるように、不正行為は大規模なものであって、多くの人がそれを手伝っており、さらに多くの人がそれを知っていただろう。
 そこで不思議なのは、こんなに大勢の社員に手伝わせておいて、そういう不正の情報が漏れないで済むと思っている人がいたらしい、ということである。この会社が特別なのではなく、三菱自動車の場合も似たようなことがあった。時代錯誤なのか、社員をわかっていないのか、どちらにしてもちょっと信じられない。
 フリーメールアドレスは簡単に取れるし、自分の電話から番号非通知でかけることだってできるのだから、匿名通報のための手段は容易に入手できる。さらに、匿名掲示板や匿名サイトの氾濫からもわかるように、自分の名前を明かさないでいろいろな主張や意見をするということは、いまやあまり抵抗のあることではなくなっており、心理面での敷居も十分低いことが想像できる。
 こんな世の中で、検査逃れのための段ボール箱運びという反感を買う仕事をやらせておいて、正義感の強い今時の若者たちが黙っていられると考える方が普通の神経ではないというのが、普段大学生を相手にしている私の実感である。無意味な労力をかけることをいまどきの若者がいかに嫌悪するか、体験したことはないのだろうか。