備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

もっとインフォームド・コンセントを?

アサヒコムのニュース(http://www.asahi.com/health/medical/TKY200410140321.html)より。

臓器提供の「意思表示カード」に記載漏れや不備があるため、提供に至らないケースが多くあることについて、厚生労働省の臓器移植委員会の作業班は14日、本人の提供意思がくみ取れる記載不備は「有効」と認める見解をまとめた。15日の臓器移植委員会と一般への意見公募を経て、正式な運用ルールとすることを目指す。記載内容が拡大解釈されるのは97年の臓器移植法施行後初めて。


 この話の前提にあるのは、臓器提供の意志というものが神聖なものであり、したがってできるだけ尊重されるべきだという思想のようである。そもそもこういった前提となる思想への疑いもあってしかるべきだが、とりあえずそのことは置いておく。
 この記事を読んで1つ指摘しなければならないと思うことは、間違った書き方でもOKということにするなら、同時に(あるいは本来はそれより先に)やらなければならないことは、ちゃんと正しく書かせるようにしようということのはずだ。
 インフォームド・コンセントの考え方に基づくならば、脳死や臓器移植について十分な情報を提供し、その上で意志の有無を確かめるべきだろう。そうやって、よくわかった人の立ち会いのもとで記入することにすれば、間違いもほとんどなくなるに違いない。記事によれば、たった数行のカードなのにその記入で間違いをおかす人が13%もいるということだ。慎重さか知識のどちらか(あるいはその両方)が欠けているにもかかわらず提供の意志を表示している人は、いったいどれくらいの割合存在しているのだろう。そういったことを考えることも重要なのではないのだろうか。
 とりあえず小松美彦脳死臓器移植本当の話』(PHP出版)あたりを読んでから(YesであれNoであれ)意志表示することにするというのはどうだろう。