備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

単位認定作業

 編入者、学士入学希望者に対して、(仮の)単位認定という作業が行われる。前の学校でとった単位のうち、新しく入る大学の既取得単位として認められるものはないかをあらかじめ大学側で検討しておく作業だ。他の大学や専門学校でどんな授業を受けてきた学生が、どういった学科に編入を希望しているのかを見ると、その人の関心の変化や志望の迷いが見えるようで興味深いところもある。しかし、基本的には黙々と前の大学などの成績証明書を見ながら、工学院大学の科目表と照らし合わせて点検する作業である。本来は自分の担当科目の近辺だけ見れば良いのだが、ついつい気になって他のところも見てしまうこともある。
 そんなことをしていて今回ちょっと気になったのは、某私立大学の(文系より)学際系の新設学部卒業生の成績表だ。英語以外にほとんど認定できる科目がありそうに見えなかったからである。というのも、体育も第二外国語も必修ではなく、いわゆる一般教養という枠もなく、単位をとった科目は、英語を除くと、専門かそれに近い科目、それに総合的な科目ばかりだからだ。そういう状態なので、工学院大学の(そしておそらく他の大学の)単位に置き換え不可能だ。
 通常、4年制大学を出ていれば「学士入学」という形になって3年に編入するのが原則だ。ただし、文系の大学から工学部に来た場合だと2年生からということも多い。しかし、英語くらいしか単位認定ができないと、3年間で残りの単位を満たして卒業というのも難しいのではないだろうか。(こういうことがあるから、包括認定つまり一度大学を出ていれば、次に入った大学では無条件で卒業単位の半分まで認められるという「裏技」が必要になるのだろうか。)
 それから、3年生に「科学技術史」というタイトルの科目を置いている高専も発見した。高等学校のカリキュラムにはない科目なので、形の上では大学レベルの教育の先取りと言えるだろう。しかし、単位認定の原則では、3年までの科目は高校レベルの学習と見なして、単位を認定しないことになっている。もっとも、授業内容は「理科基礎」の教科書が役に立っているかも知れないけれど。いずれにしても、高校と大学のレベルの境目はきわめて曖昧なものだ。