団まりな著『細胞の意思 <自発性の源>を見つめる』日本放送出版協会 (2008/07)
系統発生(つまり進化)については、一度限りの歴史という言い方が普通になされる。それに対して本書では、個体発生までも、一度限りの、物語性をもったできごととして語られる可能性が示唆されている。たしかに、個体は固有の存在であり、非可換なものだ。そして一つ一つの細胞がそういうものだ。
このような見方が生物学者から提示されるというのは非常に興味深いことだ。そういった見方と、法則性の中に個別事実を閉じ込めていくライフサイエンスの方法とが、どのように両立しているのだろうか。