備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

13歳の少女に尊厳死 心臓移植拒否認める

共同通信発各紙の記事は、

 11日付の英紙デーリー・テレグラフは、重い白血病を患い、抗がん剤治療で心臓移植が必要になった英国の13歳の少女が、病院の移植の勧めを拒否し、「尊厳死」の権利を勝ち取ったと報じた。
 病院側は裁判で争って少女に心臓移植を受けさせようとしたが、手術が成功する保証はなく、成功しても免疫機能が低下して白血病が再発する恐れもあることから、少女は専門家に相談して移植を拒否。病院側が、余生を家族と過ごすことを認めたという。
 少女は5歳のときに白血病と診断。家族は、少女が今年のクリスマスまで生きてくれることを願っているという。

というもの。 デイリーテレグラフの原文はこちら。
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/3439237/Teenager-wins-right-to-avoid-transplant.html
 ICUナース経験もあるお母さんが、こんなの治療じゃないと言っていることからもわかるように、決して治療効果が高いと予測される心臓移植ではない(裁判所もそう判断した)というのに、移植を受けさせないのは両親の虐待とばかりに裁判所に訴えてくる病院はいったい何を考えているのだろう。
 たしかに原文中にdie with dignityとあるのだが、本当に移植を受けなければ死期が早まるのかどうかも怪しいので、日本語で「尊厳死」の権利を勝ち取ったとするのはちょっと疑問。
 ところで、最近聞かないし、もしかすると忘れられつつあるのかも知れないが、日本では以下の大本のサイトにあるような事例がある。
http://www.oomoto.or.jp/Japanese/jpBiet/nosizokinani12.html
 この寺尾さんの話は、山口研一郎編『操られる生と死――生命の誕生から終焉まで』(小学館 1998年)でも読める。