備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

害虫の誕生

 瀬戸口明久著『害虫の誕生――虫からみた日本史』(ちくま新書)を送って頂きました。瀬戸口さんありがとうございます。
 害虫の誕生と言っても、文明の発展によって新種の害虫が生まれたというような話ではもちろんなくて、「害虫」という概念が登場したことを述べています。たとえば、ハエは19世紀までかわいくて人間に好まれる昆虫だったという話です。
 生物学史というより、人間と他の生物の歴史について書かれた本で、多くの方にとっては環境史というその切り口が興味深いのではないでしょうか。博士論文をもとにしていますが、時代背景など前提事項の説明もありますし、自分の研究の紹介だけでなく他の先行研究者の研究内容にも触れており、専門外の方にも読みやすいものになっていると思います。





 なお、帯やその他の宣伝文句に「なぜゴキブリは嫌われるのか?」とあるのは、ちょっとミスリーディングかも知れません。ゴキブリに関する内容はほとんどないからです。多分出版社が勝手につけたのでしょう、困った著者が後書きで弁解しているように読めます。(最近「情報倫理」の授業で、ちょうどメディアリテラシーの観点からCMを読み解くという宿題を出したばかりなので、気になっただけですが・・・。)