備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

地球の未来はゲイツが決める!?

 第1面の記事になっていたことを、目の前に座っている人が読んでいる日経新聞の紙面で確認した、一昨日の出勤時の電車内。
 東芝「ゲイツ氏と協力検討開始」 次世代原発開発
 ゲイツ、原発挑戦の真相
 ワクチン開発に熱心でグラントをたくさん出していること、ロタウィルスのワクチンを開発途上国にも広めている(しかも先進国と時間差なく、というところがポイントらしい)ということも聞いたことがあった。さらに、ここにあるように、元モンサント社の人物を農業部門のトップに据えており、これはバイオテクノロジー依存型農業をグローバルに広めることに貢献しようという意図があるからだろう。このように、手広く様々なテクノロジーへの支援を行っているのが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のようだ。
 原子力発電技術は、世界的な軍事戦略に深くembedされている(例えばどちらか一方だけを辞めるということができにくい状況になっている)ことと、わかりやすい将来の危険を人々に印象づけることが特徴だと思う。バイオテクノロジー応用食品については、環境面からも食品としての安全面からも、批判がある。また、これまでの歴史を振り返ってみれば、ワクチンの開発よりも、貧困の克服や衛生状態の改善が感染症の克服に有効であったことはよく知られている。
 エネルギー、環境、保健の問題を解決しようというそれぞれの意図はよくわかるのだが、とっている手法が最善のものなのかどうか、それが実効性をもつのかどうかという点については、あまりにも素朴にテクノロジーを信頼しているようにも思える(が本当のところはよくわからない)。
 少なくとも、科学技術政策というものに対して、お金さえあれば個人(企業でもなく、公的機関でもなく)が大きな影響を与えうること、実際にこういった財団が大きな影響を与えうるようになっていることを頭に入れておかなければならないだろう。別の問題を引き起こしていないか、ちゃんと公正にお金が使われたかどうか、おかしな利益誘導が起こっていないかどうかなど、事後評価が本当に第三者的になしうるのかどうか疑問なのだが、これだけ大規模であれば必要なはずだ。