備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

誰に売ろうとしているのか疑問だったこと(1)

 トヨタの「ラクティス」という車のテレビCMに、中高生に人気があると言われているバンドが出ていたので驚いた。出ていたというより、そのプロモーションビデオかと見間違うほどだ。30秒CMの真ん中あたりまで実物は登場せず、ファンタジックな空間に突然、違和感満載なリアル車が出てくる。楽器を積み込む最後のシーンなど、どちらにも失礼にならないように違和感を表現するなら、洋室のリビングに古風なお雛様を設置しているような感じに見えてしまう。確かにファンは喜んでYoutubeで再生数を増やしてくれるだろうが、車を買えない層に見せたところでどれほどの効果があるのか疑問が沸くのも当然だろう。もしかするとこのCMは、「若者の車離れ」を克服しようとする、業界第一人者としてのトヨタが仕掛けてた「超長期戦略」なのかも知れない。しかし、都市において、自家用車は日常必需品としての役割を終えている。若者にとっての文化的価値もまた失われて久しい。「ものづくり」から「ことづくり」と言うけれど、新しい文化なんてそんなに簡単に作れるものではないと思うので、場違いなイメージが残る。
 子どもたちが車を買えるようになる頃、同じ車種はもう売っていないだろう。だったら最後まで車を見せないビデオにしても良かったかも知れない。話題にはなったはずだ。
 ということを考えて、この「誰に売ろうとしているのか今ひとつわからない感覚」を最近同じように感じたことがあったなあと思いつつ、どうしても思い出せないできたところ、昨晩突然思い出した。(以下明日。)
 (CMには、新しいバージョンも出ていることに気づきました。上記は、最初の「出会い篇」についてです。)