備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

電子証明書をあわてて更新=住基カードの末路

 平日の区役所に行ってきました。予定外に急いでとることになった手続きは電子証明書の更新です。
 確定申告をe-TAXで行うためには、住民基本台帳カードに、電子証明書を付けておくことが必須です。3年たったので、2月の確定申告までには更新する必要があることは何となく自覚していました。しかし、「地方公共団体情報システム機構」という聞き慣れない団体から葉書が来てわかったのは、住民基本台帳カード電子証明書の更新ができるのは12月22日が最終日だということでした。どうやら、哀れなオワコン住基カードは、マイナンバーカード様が登場することにより即刻退場を促されている様子です。マイナンバーカードの発行が遅れているので、カードを申請しても確定申告の期間を逃す恐れがあるという警告もありました。
 個別に葉書を送るというのは、混乱を避けるための忠告であり、親切です。しかし、そもそも、新しいサービスがまだ始められないうちから古いサービスの更新を打ち切るというのは、公的機関が行う移行期の措置としては大変不親切です。住基カードはさっさとやめて、即刻マイナンバーに移行させたいという意図が、ありありと見えるやり方です。周知が進まないのに、新たな仕組みを急いで進めようとしたら、そこから人が遠ざかるのではないのかと心配します。住基カードの二の舞となる姿が目に見えるようです。
 もしかすると、多くの関係者は、マイナンバーカードは普及しなくても良いと考えているのかも知れないと疑っています。住基カードがそうであったように、カードを多目的で利用しようという計画は、構想倒れに終わるかも知れません。でも、そうなったら、また新しいシステムを考えてやり直すだけです。そうやって何度も試行錯誤をしているうちに、いつか社会が馴染むときが来るかも知れません。大変な費用の無駄遣いですが。そんなことを私たちの社会は全体として望んでいるのでしょうか。
 区役所で順番待ちをしているとき、後ろに座っていた高齢の女性二人の世間話が聞こえてきました。最近安値が続いている大根を1本買ったときどうやって食べ切るかという話から、「そういえば、あんたとこ、マイナンバー来た?」で始まった会話は、「年寄りにそんな難しいこと、やらせてもね」で終わりました。リテラシーを要求するイノベーションは、高齢社会には不向きです。