備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

時限付メディア

歴史研究をしていると、1、2年分しか見つからない雑誌に出会うことがあって、終巻したのかどうかもわからず困惑するとともに、どんなドラマがあったのかと想像をたくましくすることがあります。
現代ではそんなものはないだろうと思っていたところ、ちょっと部外者にはわかりにくい例がありました。
東京大学生命・医療倫理教育研究センターのサイトに
http://cbel.jp/data/response/PolicyIssues*.pdf (*には半角数字が入ります。)
というファイル群があって、PolicyIssuesという簡単な定期刊行物を読むことができます。
ここで*=1,2,3,4,5,6,7,8のファイルはあるのですが、*=9 としてみて、
http://cbel.jp/data/response/PolicyIssues9.pdf
をリクエストすると"URL not found"となるので、このPolicyIssuseという媒体は8号までで終わっているように見えます。
そう思っていました。
ところが、後日4号から8号までは別のサイトに再録されているのを発見しました。中身は同じです。
東京大学政策ビジョン研究センターのサイトです。
たとえば、こちらのドキュメント
Policy Issues No.4 2009年7月4日発行(東京大学生命・医療倫理教育研究拠点形成)
http://cbel.jp/data/response/PolicyIssues4.pdf脳死臓器提供:法改正で何が変わったのか」
は、下記のサイトと内容が同じです。
2009.7.30 脳死臓器提供: 法改正で何が変わったのか
http://pari.u-tokyo.ac.jp/publications/policyissues_bio_4.html
前者は東京大学生命・医療倫理教育研究拠点創世(CBEL)が発行者で、作成者はCBELの政策検討チームです。それに対して、後者は東京大学政策ビジョン研究センター(PARI)に存在する生命・医療倫理政策研究ユニットがCBELの研究成果を踏まえて発表したものになっており、前者には記してあるチーム名やチームの個人名は出ておらず、誰が書いたのかわかりにくくなっています。サイト内を探せばユニット名は出てきますが、そのメンバーは前者のチームメンバーとすべて同じというわけではなく、そうすると重なっている人が主筆者ではないかと想像することが可能です。
また、さらにPARIは5号分を採録したのに続けて、固有のPolicyIssuesなるサイト内の読み物を掲載しており、そのナンバリングは、今度は発行順ではなく発行年に基づくものに変更されました。結果、2010年の10-1号からのため、9号というものが存在しないことになっています。
ウェブアーカイブが中途半端に残ったとき、後世の歴史家は迷うかもしれないなと思ったしだいです。