備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

柑橘系男子

 先日とある方から「ミカンどうですか」と言われてもらったのがポンカンだったので、どうしても気になって振り返ってみた。自分の感じる違和感を素直に口にして人を咎めるより先に、自分の側にその違和感の原因がないかと考えてみることが重要だと、さすがの私も十数年におよぶ勤め人生活で理解してきた。
 思うに、東日本の人たちは、比較的小さな柑橘類の果物のことを総じて「ミカン」と呼んで済ませているのではないだろうか。逆に、柑橘系果実に関する語彙において、瀬戸内海沿岸や九州の出身者はこだわりがあるのではないか。だからこそ、ポンカンをミカンと呼ぶことに私は違和感を感じたのではないか。そのように推測してみた。
 思い返してみると、私の育った地域では、各家庭はミカンを箱単位で買い、こたつの上にはミカンが置かれ、毎食後ミカンを食するというのが自然であった。子どもたちはミカンを使ってできる遊び、房数えに始まり、いかに上手に白い筋をとるか、手で皮を細長く途切れないように剥いてその長さを競うなどに夢中になった(個人の感想です)。ザボンなど、珍しい種類の「ミカン」についても、時折目にすることがあったような気がする。
 さらに好物はミカンと公言していた私など、ミカンを食べ過ぎて、身体中の皮膚がオレンジ色になったことがある。この話は若い頃には信じてもらえないことも多かったが、インターネット時代は便利なもので、柑皮症という言葉も検索ですぐ見つかる。医師の診断を受けたわけでもないし、本で読んで知っていたわけでもなかったが、子どもながらにミカンが原因であることに何の疑いも感じていなかった。
 ところで、区立小学校に通う10歳児がもらってくる給食献立表を見たところ、この季節のデザートのバリエーションが柑橘類でまかなわれており、「はるみ」「いよかん」などの種類も個別に記され、食育的な側面から柑橘類が取り上げられていることを知った。ぜひ東京人もしっかり学んで、ミカン通になって欲しいものだと思いつつ、本日もまた家族でミカンを食べるのは私だけという日が続くのであった。