備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

1960年代のオール電化

 知らない間に我が家の蔵書になっていた加古里子『だるまちゃんとかみなりちゃん』を発見。
 かなりお気に入りの絵本だったはずなので、40年のあいだにどれほど記憶が残っているか確かめたくなって、手に取る前にストーリーを思い出そうと試みた。かみなりちゃんが雲の上から何かを落として、だるまちゃんが一緒に探す話だったと記憶していたのだが、ちょっと違っていた。かみなりちゃんは浮き輪とともに落ちてくるが、その浮き輪が木に引っかかってだるまちゃんがいっしょに取ろうとするというというのが正しい設定だった。空にプールがあるというのは大人の想像を超えた設定で、私の脳の中で生き残っていなかったようだ。
 雲の上のカミナリさまの世界の様子は、微かに記憶に残っていた。今見直してみると1960年代当時に描かれた近未来的な都市のイメージとしてとても面白い。カミナリ様の世界は「電気」をモチーフにした先進的な世界になっている。電気で動いていると思しき乗り物があり、無線通信で相互に制御されている機器があるようにも見える。作者の加古里子かこさとし)氏は昭和電工の技術者だった方。公害問題がクローズアップされ、工業化学が批判を浴びていた時代に、第二水俣病の原因企業と言われた会社に勤めていた童話作家は、科学技術と人間の関係についてどのような未来を思い描いていたのだろうか。