備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

ワイスマンセミナー

 お茶の水女子大学ジェンダー研究センターのイブニングセミナー「ジェンダーとテクノサイエンス」に出席して、コメンテータ役で15分だけしゃべる。
 ワイスマン先生の話はもらっていた原稿のとおりで比較的わかりやすいもの。私のコメントというか質問は、ウィナーの言う技術の「本質的政治性」とピンチとバイカーの言う「解釈上の柔軟性」の関係について。両者は必ずしも対立しないという答えと、コミュニケーション・テクノロジーにおいてはむしろ柔軟性が見られ、必ずしも政治性が埋め込まれたものではないというコメントをもらった。
 面白かったのは、舘先生が私のコメントを聞いて「STSの人がどうしてジェンダー論に向かわないかがわかった」と言われたことだ。「市民」とか「社会」とか大きな括りで問題を考えたがるからだというように理解されていたが、たしかに当たっている部分もあるけれど、STSがマイノリティに注目していないわけじゃないとも思う。
 肝心のワイスマン氏の話のなかで一番勉強になったのは、もう一人のコメンテータである三村さんへの回答の中でコンセンサス会議に対する懐疑的態度を示したところだ。(1)市民の側が勉強させられる、(2)ある種の特定のテーマしか扱わない、(3)既に社会に出てしまった技術をどのように変えていくかという、デザインにまで踏み込んだ関与が大切、という3点はどれも当を得ていると思う。
 ということで、けっこう面白いので、STS関係者の人ももっと来て欲しいとのことでした。
 連絡が遅れて迷惑をかけた皆さん、すみませんでした。それから、日本語で書いてもわかりにくい私の原稿を、内容までちゃんと理解して英語に直してくれた高橋さきのさんには大感謝。