備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

本当にあった数学者M氏との会話(その2)

 帰りがけに27階のエレベータホールで数学者M氏と一緒になった。
 しばらくエレベータを待っていたところ、▽のランプが点滅して下行きがやってきた。ところが、一瞬後に別のエレベータの△が点灯し、そちらもドアが開いた。私は素直に下行きに乗り込んだが、M氏が一瞬とまどったのに気づいた。一応2人とも下行きに乗り込んだが、もう1台のエレベータから乗客が全員27階で降りるのが見えた。ドアが閉まって2人きりになると、M氏が「これは難しいケースですよ」と首をひねりながらぽつんと呟いた。その言葉がよくわからなかったので、説明をお願いした。
 「上行き」で来ても、誰も乗っていなかったりあるいは全員降りた場合、乗り込んで下の階のボタンを押せば下に向かうことがよくある。ここまでは、エレベータの停まる最上階=28階の1つ下の階である27階の「住人」なら誰でも知っていることだ。しかし、さらにM氏によれば、途中階で下行きの人を拾っていく役割は、最初から下行きであった方のエレベータに割り振られるようになっているために、もう一方に乗った方が早く下に着く可能性が大きいということだ。ただし、もちろん28階でエレベータを呼んでいる人がいるかも知れないので、一旦上に行ってしまうというリスクもある。だからどちらに乗るかとても難しいケースであるとのことだった。
 M氏のとまどいの理由が判明した。
 なお、「その1」(とは言っていないが)こちら。シリーズ化なるか?