備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

生活世界の実験室化

 新しいテクノロジーが次々に登場する社会において、市民はつねにそれらのテクノロジーの実験への参加者とならざるをえない。そういった状況を「生活世界の実験室化」と呼ぼう。(なお、この状況は高度産業化社会の必然であり、3.11以降東日本の市民がガイガーカウンターを求めるようになるずっと前から始まっていた。)
 また、とりわけ、研究や創作という営みが日常的に行われている大学というところは、そういった実験を受け入れやすい場でもある。したがって、めぐまれたことに私はそういった実験に参加する機会が多いと考える。たとえば、建築学部を擁する大学は、どこにもなかった建物をあえて作り、使って見せて、それによってどこに問題があるかを暴き出すことが使命なのだろう。どれほど寒いのか、どれほど電気を大量に使うのか、そういったことはもちろん予想できる部分もあるだろうが、実現して初めて判明する詳細もたくさんあるに違いない。そのような経験を積み重ねて技術は改良されていくものだから、実験に参加することは社会的な貢献なのである。したがって、寒さに耐えることもまた、物作り教育の一部なのだ。
 昨日の会議では暖かいお茶を出してもらえました。初めてのことです。ありがとうございます。