備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

 ここのところ、ときどき休みの日にベビーカーを押しながら近所の公園を散歩することがある。
 この公園は、整備されて開放されたのは最近なのだが、もともと国立病院の敷地であった部分を含んでおり、国と区の土地を利用した整備計画によって福祉施設などとともに開発が行われたところだ。「森」というその名は少し大げさかも知れないが、ゆうに20m以上の背丈はある木々が続いており、これだけの余裕あるスペースがこんな都心近くにあるというのはちょっと感動的でもある。ビオトープと名付けられた手入れされていない池はなくてもよさそうだと思わなくもないが、それでもしばし時間を忘れさせてくれる場所だ。
 できる前から介護士の集まりが悪いと全国ニュースでも話題になっていた(が多分問題は解消したのだろう)老人福祉施設や障害者施設から、職員の人に手を引かれ、あるいは車椅子を押されて入所者が出てきている姿をところどころで目にすることができる。本日は、木陰に設えられた正方形の木のテーブルにテーブルクロスを敷いて、お弁当とワインにいそしむグループを目撃したが、クロスの形と大きさがテーブルにぴったりだったので、これは近所から来た常連という雰囲気だ。できてまだ1年たっておらずあまり知られていないからか、あるいは犬の散歩と花見とスポーツは隣の少し古い公園にお任せして単なる芝生と森という地味な作りになっているからか、あるいはちょっと交通の便が悪い(バスはそれなりの本数あるのだが)からか、あるいは多少の起伏のせいで先の見通しがあまりよくないせいか、公園全体がとても広々として見える。
 先日は、老人福祉施設の地域開放スペースで行われていた童謡のコンサートをのぞいてきた。公園を歩いていても、赤ちゃんはお年寄りの皆さんの注目を浴び、声をかけられることもしばしばだ。
 そんなふうに知らないおばあさんに掛けられる声や、ときにはけたたましいほどに響く鳥の声や、土と木のにおいを運んでくる風といった刺激が、1歳児に何を与えるのかよくわからないが、それでもたびたびここに連れてきたいと思う、そういう場所であることはたしかだ。
 それから、子連れでなければ、私自身がこんなところには来なかっただろうとも思う。