備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

不便なのでPASMOを「買った」。

 もっている便利だからというより、もっていないと不便だから「買った」のだと思う。
 改札で使えなくなった磁気カード=パスネットだが、切符の自販機や構内の精算機ではまだ使うことができたので、残額は最後まで無事使い切った。その後、現金で切符を買って乗ろうとしたときに、同じ自販機でPASMOを入手できることに気づいたので、それならいっそという思いでもつことにした。
 それなりに使い慣れた駅のはずだが、自販機で切符を買ってから改札に向かうという身の運びが習慣化されていないためか、多少ストレスを感じていた。かつて当たり前にやっていたことに、今では不便さを感じている自分がいることに気づいた。ただ、慣れればそれが普通になるのかも知れない。間違って改札に直行することもなくなるだろう。その程度のものに過ぎない。
 ある「物」あるいは「技術」を「すそ野」にまで広めようと思ったら、それがないと不便なようにしてしまうのが良いに違いない。携帯電話の場合は実際そうだったし、地デジチューナがもし一家に一台広がるようになるとしたら、そういうやり方しかないのではないかと思う。
 最初に手にする人たちはきっと便利だからそうするのだろうし、全体としてもそうした方が合理的だからそちらへと誘導がかかるのだろう。でも、最後に手にする人は、むしろそうしないと不便だからに過ぎないのではないだろうか。