備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

1泊帰省

 4日、5日は3歳児と帰省。実を言うと、お正月と言ってよい季節に帰省するのはとても久しぶりのことで、いつ以来なのか思い出せない。すぐに思い付くのは、ネコを飼い始めてからは帰ってないはずなので、16年は帰っていないということだ。その前も、予備校の仕事があったから帰っていないはず。
 そもそも行事を重んじない実家だったが、お正月(とクリスマス)だけは少し違っていた。お雑煮用の割り箸の袋に、祖父が毛筆で一家全員の名前をそれぞれ書いた。朝食の前に祖母が「天のお父様」にお祈りを捧げた。いつもバラバラな家族に、この日ばかりは統一行動が求められた。父は冗談めかして「儀式」と呼んでいた。大学生になって上京し、元旦を実家で迎えなくなったのは、もちろん友人と過ごすのが楽しかったからだし、また実際にアルバイト(年賀状の仕分けとか)もしていたのだが、それだけではなく実家の堅苦しさの象徴であるようなその時間に家にいたくなかったからかも知れないと考えた。今では取り戻すことのできない時間だ。
 帰省した実家では、遺影の祖父母が見守る部屋で眠った。
 今の実家のお正月の生活は、その当時とは打って変わって、普段とあまり変わらないものに違いない。晩ご飯のおかずに中途半端に出てきた黒豆に、実家のお正月の残り香を辛うじて感じることができた。