備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

ゲノム4領域

 科学研究費特定領域研究の集まりで、9月6日からの3日間、富山。国際会議場とその隣のホテルを往復。
 5分の口頭発表の他、生まれて初めてポスター発表をした。直前になってこんなもので良いのだろうかと不安になって、Googleで「ポスター発表とは」で検索をかけたくらいだ。誰も注目してくれなかったらどうしようとも考えたが、東大のS倉研究室の学生さんたちが聞いてくれたので、意味がないわけではなかったと考えたい。
 他の人の研究発表については、染色体の核内配置から進化の過程を知るとか、免疫をつかさどるB細胞・T細胞類似の細胞が硬骨魚類以前から存在しているという話とか、魚の縞模様の形成とか、理解できた範囲のこと(それが少ないのだが)は面白かった。
 それに対して、最も関心をもって聞きに行った「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」のシンポジウム方は今ひとつ。法律学者から、法律で禁じられてなかったら積極的にやって良いということだという趣旨の発言がある。法律家は研究の足をひっぱっているんじゃないかと言いたげな研究者側の発言を受けての文脈だから防衛的になるのもわからないでもないが、そんな法哲学は普通にはありえないと思う一方、現実はそうなっていると言えなくもない(恐ろしいことに)。
 また、患者・サポートグループ・臨床医・研究者のネットワークを緊密にしよう(研究試料を確実に入手するために!)というようなレポートもある。こういうのは、患者側から見たら本末転倒だと思う。研究第一主義の考え方が患者側からの不信感や拒否反応を導くのだということが理解されていないのが問題ではないかと考えるが、さらにこういった動きについて良いことをしているかのような雰囲気もないではなくて、本末転倒ぶりがまったく理解されていないところについては不思議な感じすらした。思いの他、コミュニケーションのギャップが大きいのではないかと考えさせられた。いろいろと勉強になったし、意外なうれしい出会いもあったが、問題の難しさを思い知らされ、ますます強い疎外感を感じるようになっていった。
 これからどうしようか?