備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

2日続けて研究会参加

 20日。お茶の水女子大学COEプログラムの研究会「ファン・ウソックスキャンダルから考えるES細胞研究のこれから」を聞きに行く。この「スキャンダル」については、これまで断片的な情報しか知らなかったので大変勉強になった。
 最初に報告した洪氏は、韓国社会固有の現象という側面を指摘した。この「スキャンダル」が文化論的に非常に面白い現象であるということが、よくわかった。ただ、韓国の科学技術政策とか、韓国における市民の科学観とか、そういうところに関しては逆にむしろ疑問が深まる。(終わってから、前日も一緒に飲み会に行った科学史家K氏にも意見を聞いて少しは理解できたが、まだまだ謎だ。)
 そもそもこの問題については、ヒトクローン胚からES細胞をゲットするという研究が「不適切」に行われたことに問題があるのか、それともそもそもそういう研究そのものに問題があるのかというと、後者の問題を強調しなければならないのではないかと思ってきた。捏造スキャンダルというこの機に乗じて問題点を指摘すると、むしろ前者の問題性を際だたせることにならないか、という懸念もないわけではない。そんなふうに考えてきたので、この問題をクローン研究史の中に位置づけ、単なる「スキャンダル」で終わらせないことが大切だと主張する粥川氏の報告は、とても重要な問題点を指摘していると感じた。(粥川氏に修論(CD-R)をもらいました。ありがとうございます。)