備忘録

科学技術論を専門とする大学教員・研究者である林真理の教育、研究、生活雑記。はてなダイアリーから移行してきました。

ふるさと納税は直接民主主義か?

 最初にふるさと納税構想の話を聞いたときから、出身地限定というのは事務的に不可能なので、実質的に納税先の自治体を自由に選べることになるのではないかと、少し期待していた。もしそれが可能なら、某外国軍基地の受け入れを拒否して財政が逼迫する自治体などに、全国の支援者から税金という形で寄付が届くなどということがありうるのではないかと考えたからだ。
 結局、寄付控除という形をとることになったらしく、手数料5000円(寄付控除の最低金額)がとられる(ただしその分を地元のお土産というような物の形で還元するサービスを行う自治体はあるようだ)ので、実際に納税先をデフォルトから変更するという人がどれほどいるかわからない。また住民税の1割が控除の上限ということなので、その金額は(たとえ多数がこの制度を利用しても)自治体財政全体にとっては大きなものにはならないだろう。しかし、たとえば東京都に税金を納めるのは気持ち的に嫌だと考える人、それを実践したいと思う東京都民の数は、それほど少ないものではないと思う。金額的にはたいしたことにはならないかも知れないが、利用頻度は人の思い入れの大きさが反映したものになるだろう。
 あと、この制度の周知は、結果的に地方税に関する意識の向上という広報的な観点からも大事なのではないか。ただ、東京都などそもそも地方税収入の多い自治体は、あまり宣伝しないと思う。